研究テーマ

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 >   “化学”の視点から農業環境を見直す!植物栄養・肥料学研究室

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1.作物の生理障害(栄養障害)の原因解明とその対策技術の開発(樗木 team)

作物生産において、しばしば栄養元素の欠乏による生理障害(栄養障害)が発生し、営利栽培上の大きな問題となっています。

下左の写真は、鹿児島県内で発生したソラマメの生理障害の事例で、莢の内部が黒く水浸状になっています。私たちは、この生理障害が 「ホウ素」の欠乏によって発症すること、また、地上部にホウ素の水溶液を散布(葉面散布)することで発症を軽減できることを明らかにしました。 現在、このホウ素欠乏症がどのような環境条件下で発生するのか、その発生要因について調査・研究を進めています。

このように農業生産現場で問題となっている生理障害(栄養障害)について、現地調査と土壌分析、作物体の栄養状態の分析、水耕栽培による実証試験などを通して、原因の解明とその対策技術の開発について取り組んでいます。

ソラマメのさや綿状組織黒変障害(通称「綿腐れ症」)の症状

ソラマメのさや綿状組織黒変障害(通称「綿腐れ症」)の症状

ホウ素を欠如した培養液による再現試験の様子

ホウ素を欠如した培養液による再現試験の様子

2.地域の未利用バイオマス、水資源を有効活用した作物栽培技術の開発(樗木 team)

地球・地域環境の保全に関する関心が高まる中で、「大量消費・大量破棄型」の社会から「資源循環型」社会への転換が求められています。そのためには地域内の未利用バイオマスの有効利用技術の開発が必要とされています。

私たちは、さまざまな未利用バイオマス含有するのさらなる有効利用を図るために、含有する肥料成分を考慮した、適切な作物栽培技術の開発に取り組んでいます。

例えば、下水処理によって再生された「下水処理水」を利用した各種作物の水耕栽培技術の開発、あるいは、家畜排せつ物等の有効利用技術のひとつであるメタン発酵処理によって大量に排出される「メタン発酵消化液」を、バイオマス資源作物「エリアンサス(Erianthus spp.)」 の栽培に利用することで、未利用バイオマスを地域内で有効利用ができないか、その技術開発に取り組んでいます。

*鹿児島県 バイオマス高度利用推進事業補助金:平成24年、25年度
*「ファインバブル等による畜産廃棄物の悪臭対策と耕畜連携システムの構築」
       革新的技術開発・緊急展開事業(農林水産省):平成28年度〜

唐湊果樹園圃場でのエリアンサスの栽培試験の様子

唐湊果樹園圃場でのエリアンサスの栽培試験の様子

下水処理水を用いた栽培システムの様子

下水処理水を用いた栽培システムの様子

3.耕地生態系(土壌−植物系)における微量元素の分布および動態の解明(赤木 team)

重金属をはじめとする微量元素は、生物の生存・生命活動の維持に大きく関与しています。 この微量元素が環境ないし生態系の中にどれぐらい存在し(分布)、どのように循環しているのか(動態)について知ることは、私たちを取り巻くさまざまな自然を理解する上でと非常に重要です。

作物生産の基盤である農耕地を取り巻く生態系(耕地生態系)は、さまざまな人間活動が介入しており、「自然生態系」とは微量元素の分布・動態が異なることが予想されます。
私たちは、生態系における物質循環に大きな役割を担っている土壌に存在する微量元素の分析を通して、耕地生態系における微量元素の分布・動態の解明を試みています。

一方、これら耕地生態系中の微量元素が、作物生産(収量および品質に対してどのような影響を及ぼすのかについても、水耕栽培および土耕栽培試験を通して研究を進めています。
これらの研究成果は、農産物の品質・安全性を検証する上でも大きく役立つものと考えています。

*「我が国の農耕地土壌におけるフッ素蓄積の実態」科研費(挑戦的萌芽研究:研究代表者):2013年〜2015年
*「土壌の還元化による有機態臭素の可溶化効果および水稲栽培下における臭素収支の解明」
科研費(基盤C:研究代表者):2018年〜

微量元素が各種作物の生育に及ぼす影響についての水耕栽培試験の様子

微量元素が各種作物の生育に及ぼす影響についての水耕栽培試験の様子

微量元素の測定に威力を発揮する誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)装置

微量元素の測定に威力を発揮する誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)装置

4.南九州地域のネコブセンチュウ(Meloidogyne spp.)による作物被害の実態把握(赤木 team)

日本を含む世界各地でネコブセンチュウ(Meloidogyne属)と呼ばれる植物の根に寄生し、加害する線形動物(植物寄生性線虫)が作物生産に大きな被害を及ぼしています。 九州地域においてもサツマイモ、ニンジン、ウリ科作物(キュウリ、ニガウリなど)、ナス科作物(トマト、ピーマンなど)といった多くの農作物でネコブセンチュウによる被害が問題となっています。

ネコブセンチュウに対して、的確・効率的な防除技術を開発するためには、ネコブセンチュウによる作物被害の実態について、十分に把握しておく必要があります。

私たちは、例えば、どの地域で、また、どのような作物に対して、どのネコブセンチュウ種がどの程度の被害を及ぼしているのか(地域・作物種と加害線虫種・被害程度の把握)、あるいは、土壌中にどれぐらいの数(密度)のネコブセンチュウがいればどの程度の被害が発生するのか(線虫密度と作物被害との関係)といったことに興味を持ち、調査を進めています。

ネコブセンチュウの寄生したピーマンの根

ネコブセンチュウの寄生したピーマンの根

DNA解析(PCR-RFLP法)によるネコブセンチュウ種の判別

DNA解析(PCR-RFLP法)によるネコブセンチュウ種の判別

5.地域の作物栽培における諸課題の解決に向けた調査・研究

鹿児島大学農学部では「地域連携ネットワークプロジェクト」を中心として地域の農業・林業・畜産業を取り巻く課題の解決に向けた取り組みを行っています。
本研究室でも、これに対応した調査・研究を実施しています。

*「湧水町アーモンド植栽等調査研究」(受託研究)
*「気象災害に強く安定多収なサトウキビ適正品種の導入と省力低コスト生産技術体系の確立」
 革新的技術開発・緊急展開事業(農林水産省)

日置市吹上町田尻地区における土壌調査

日置市吹上町田尻地区における土壌調査

湧水町栗野岳山麓における土壌調査

湧水町栗野岳山麓における土壌調査

水町アーモンド圃場における土壌調査

湧水町アーモンド圃場における土壌調査

南種子町におけるサトウキビ圃場における土壌調査

南種子町のサトウキビ圃場における土壌調査