主な研究成果

近交系ミニブタの体細胞クローン動物を作出

体細胞クローニングの成功率は用いる動物の遺伝的バックグラウンドに強く影響され、近交系の体細胞クローン動物を作出することは極めて困難であることが知られています。私たちは、鹿児島大学農学部において確立・維持されているクラウン系ミニブタを用いて、近交系ミニブタの体細胞クローン動物(雄)を作出することに国内で初めて成功しました。

「鹿大 クローンミニブタ成功 人間への臓器移植に期待」(南日本新聞2005年11月25日朝刊掲載)
「純粋系統のミニブタ クローン生産に成功 鹿児島大学 移植臓器提供に道」(日本経済新聞2005年11月25日朝刊掲載)
「クローンミニブタ誕生 鹿大 臓器移植用素材に道」(毎日新聞2005年11月26日朝刊掲載)
「クローンミニブタ誕生」(朝日新聞2005年11月27日朝刊掲載)

顕微授精によって黒ブタを作出

黒ブタ(バークシャー種)は鹿児島特産の家畜として知られていますが、近親交配が進んでいるため白ブタ(三元交雑種)と比較して繁殖効率は劣っています。私たちは、食肉センターに出荷された黒ブタの卵巣から回収した卵子に黒ブタ精子を1匹ずつ注入した後、それらを白ブタの卵管に移植して黒ブタを出産させることに世界で初めて成功しました。この技術は、黒ブタにおける種の保存や優良形質の維持に有効です。

「黒豚、顕微授精3匹誕生 鹿児島大の研究グループ」(朝日新聞2005年11月30日朝刊掲載)
「黒豚の顕微授精成功 / 鹿児島大学」(南日本新聞2005年11月30日朝刊掲載)

体細胞クローンミニブタの繁殖能力を証明

体細胞クローン動物が正常な繁殖能力を有していることは、体細胞クローニングを応用して作出した遺伝子改変動物を増産するために必須です。私たちはクラウン系ミニブタの体細胞クローン動物(雌)を再度作出し、性成熟後に人工授精することによって正常な産子を得ることに成功しました。このことから、体細胞クローンミニブタが正常な繁殖能力を有していることが証明されました。

「体細胞クローン ミニブタ同士で成功 鹿大 コスト・リスク減期待」(南日本新聞2007年1月24日朝刊掲載)

ヒトアポリポプロテイン(a)遺伝子導入ミニブタを作出

現在、日本人の3人に1人が動脈硬化症が原因で起こる心筋梗塞や脳梗塞等で亡くなっています。私たちは体細胞クローニングを応用して、ヒトアポリポプロテイン(a)遺伝子を導入することにより、動脈硬化症の危険因子の一つであるリポプロテイン(a)の血中濃度が高いクラウン系ミニブタを作出することに、世界で初めて成功しました。これらの遺伝子改変ミニブタは、疾患モデル動物として動脈硬化症の治療法確立に有用であると思われます。

「動脈硬化治療に期待 因子持つミニブタ開発 鹿大 世界初」(南日本新聞2015年7月31日朝刊掲載)