森林保護学研究室では森林動物、昆虫、微生物の各分野について基礎から応用まで幅広く研究を行ってきました。これまで扱ってきた主なテーマには以下のようなものがあります。
全国的に問題になっているマツ材線虫病(マツ枯れ)、ブナ科樹木萎凋病(ナラ枯れ)、シカといった病害・獣害に加えて、鹿児島は移住害虫の最前線となっています。更に、好調な林業を支える木材市場では穿孔性の害虫が、公園や道端の植え込みでは輪紋葉枯病の発生が問題になっています。一方、そういった目に見えて重要な病虫獣害以外にも、様々な病虫害が発生していますが、これらも決して無視していい存在という訳ではありません。 森林保護学研究室ではこれら様々な病虫獣害に取り組んで来ました。近年では特にシカ被害と輪紋葉枯病について集中的に取り組んでいます。
森林生態系においては、多種多様な動植物、微生物がお互いに多様な関係性を持って生活しており、それらが生態系の様々な機能や安定性に貢献しています。森林保護学研究室では動物や菌類を中心に森林生態系における様々な生物の生態を追ってきました。とりわけ、樹木の更新や成長と密接な関係を持つ生物たち、例えば哺乳類や鳥類の種子散布者や、内生菌や菌根菌といった樹木共生菌を重要なテーマとして扱ってきました。近年では野性鳥類の様々な生態や、植物の果実の形質、地上性キノコの発生生態などに注力しています。一方、世界自然遺産に登録されている屋久島、奄美大島、徳之島をはじめとして、鹿児島県には希少生物が多数生息しています。そういったいわば特別な場所でなくても、我々の身近にも保護すべき希少生物や絶滅危惧種が生息しているのです。森林保護学研究室では、そういった希少生物や、それらを脅かす外来種を含む様々な生物の実態把握の取り組みも行っています。