研究(食品の研究)

米糠の食品機能性に関する研究

米は麦、トウモロコシと並ぶ三大穀物の1つであり、我が国においては主食となっています。米は、年間約880万トンが精米され、その工程では玄米表面の果皮、種皮、糊粉層及び胚芽を含む米糠が分離されます。米糠の外側である果皮や種皮部分(米糠外層)には、内側の糊粉層や胚芽と比較して、より多くの不溶性食物繊維が含まれています。不溶性食物繊維の摂取により、腸管内における短鎖脂肪酸の生成が促進され、腸管内容物のpHが低下することで腸内細菌の生育環境や便通が改善されることが知られています。
当研究室では、果皮や種皮を多く含む米糠外層に注目し、米糠外層(OBFR)を配合した飼料をラットに給与すると、糞便排泄および糞便中への脂質排出の増加や腹腔内脂肪の減少がみられることを明らかにしました(Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry. 79 (8), 1337-1341.2015)。

米糠の食品機能性に関する研究

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry. 79 (8), 1337-1341.(https://doi.org/10.1080/09168451.2015.1032883)
WRB, whole rice bran(米糠)
OBFR, outer bran fraction of rice(米糠外層)

続いて、米糠外層を給与したラットの腸管内容物、血液、および肝臓の代謝産物のメタボロミクス解析を行って、米糠外層の摂取が生体内の代謝状態に及ぼす影響について検証を行いました。米糠外層の摂取は、糖質や脂質の腸管における吸収効率(消化率)を低下させましたが、体重増加には負の影響が認められませんでした。一方、米糠外層の摂取により、腸管内での短鎖脂肪酸産生や分岐鎖アミノ酸の産生が増加することが示唆されました。加えて、肝臓のメタボロミクス解析と遺伝子発現分析の結果より、肝臓における糖新生経路の活性化が示唆されました。これらの結果より、米糠外層は、糖質や脂質などの栄養素の吸収を阻害する一方で、体内における糖代謝(糖新生)を変化させることが明らかとなりました(Nutrients, 12 (2), 430. 2020)。

血液と肝臓のメタボロミクス解析結果

図1. 血液と肝臓のメタボロミクス解析結果. A, B, 同定された代謝産物. C, Metaboanalystを用いたエンリッチメント解析の結果.

肝臓におけるmRNA発現の分析結果

図2. 肝臓におけるmRNA発現の分析結果. 白, 対照飼料を給与したラット. 黒, 米糠外層を給与したラット.

Nutrients

Nutrients, 12 (2), 430. (https://www.mdpi.com/2072-6643/12/2/430)