研究(飼料の研究)

新規飼料添加物の評価と未利用農産資源の飼料化に関する研究

ニワトリに対する酵素剤(セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、およびペクチナーゼ)の飼料添加が大豆やとうもろこしの細胞壁画分の分解を促進し、飼料の消化率を改善することを明らかにしました(Poultry Science 87, 713-718. 2008)。また、甘藷焼酎の製造に際して大量に発生する蒸留廃液(焼酎粕)の栄養生理機能の検証ならびに配合飼料としての加工法の検討を行い、その結果、焼酎粕には微量投与でも顕著なニワトリ成長促進作用が認められました(Japanese Poultry Science 33, 96-103. 1996)。続いて、焼酎粕のヘキサン抽出画分が、ブロイラーの骨格筋タンパク質分解系の抑制を介して骨格筋量の増大と成長促進作用を持つこと(Bioscience Biotechnology and Biochemistry 74, 92-95. 2010)、ならびにその生理活性物質(ブトキシブタン)を明らかにしました(Kamizono, Ohtsuka et al. Journal of Poultry Science 50, 37-43. 2013)。加えて、焼酎の醸造に使われる黒麹菌(Aspergillus Awamori)の加水分解酵素活性と発酵熱を利用して、食品廃棄物の消化・乾燥を行い、高消化性の乾燥配合飼料を開発しました(Animal Science Journal 76, 245-248. 2005、Journal of Poultry Science 44, 291-296. 2007)。また、Aspergillus Awamoriの菌体を飼料に微量添加すると飼料消化率の改善、骨格筋タンパク質分解の抑制、ならびに骨格筋量の増大と成長促進が起こることを明らかにしました(Journal of Poultry Science 48, 201-206. 2011、Animal Science Journal 83, 594-598. 2012、British Journal of Nutrition 108, 1596-1602. 2012)。

抗酸化作用を有する未利用農産資源の飼料化に関する研究

暑熱環境下における黒麹菌(Aspergillus Awamori)、ハーブ混合物、セレンナノ粒子、ならびにアスタキサンチン含有資材の飼料添加が、それぞれニワトリ生体内の酸化ストレス状態の軽減作用を示すことを明らかにしました(The Journal of Poultry Science 51, 281-288. 2014; Veterinární medicína 59, 536-542. 2014; The Journal of poultry Science 53, 274-283. 2016; Animal Science Journal. 90(2), 229-236. 2019)。さらに、セレンナノ粒子については、ニワトリの成長に関与すること(British Journal of Nutrition 84, 727-732. 2000)、ならびに骨格筋におけるGSH-PxおよびSODの遺伝子発現量を増加させることを明らかにしました(The Journal of poultry Science 53, 274-283. 2016)。

タンカンの摘果果実の飼料化に関する研究

タンカン(Citrus tankan Hayata)は、温暖な地域で栽培されるカンキツ類の一種で、その食味や香りが高く評価されています。一方、大きな果実の生産を目的として、夏季に摘果された果実の再利用方法は検討されていません。カンキツ類は、フラボノイド、クロロゲン酸、ビタミンC(アスコルビン酸)、カロテノイド類、ビタミンE(トコフェノール、トコトリエノール)などの抗酸化作用を示す化合物を含みます。本研究では、タンカン摘果果実の乾燥粉末の飼料添加が、ブロイラーの飼養成績および肉質特性(脂質過酸化度、ドリップロス、およびに色調)に及ぼす影響を調べた結果、タンカン摘果果実の飼料添加が、浅胸筋(むね肉)の脂質過酸化度とドリップロスを低下させ、その赤色度を高めることを明らかにしました(Journal of Warm Regional Society of Animal Science, Accepted)。

ピリミジン生合成経路の重要な中間体(オロット酸)の飼料給与と畜産物の品質に及ぼす影響の研究

ニワトリは、汗腺を持たず、体温が高いため、他の家畜よりも暑熱ストレスに対して脆弱な動物です。暑熱ストレス環境下では、生体内で活性酸素種(ROS)の産生量が増加します。その結果、ニワトリの成長と鶏肉の収量の低下、ならびに鶏肉品質の低下が起こります。
先行研究(Tomonaga et al. Anim. Sci. J. 2018, 89, 448-455)において、暑熱ストレス環境に曝露されたニワトリの血漿の代謝産物をガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)を用いたメタボロミクス分析した結果、含硫アミノ酸の代謝経路、トリプトファン代謝のキヌレニン経路、および核酸代謝など35の代謝経路に影響が現れることが報告されていました。加えて、ピリミジン生合成経路の重要な中間体であるオロット酸の血漿中濃度が大幅に低下することが報告されていました。
本研究では、暑熱環境下で飼養したニワトリに対するオロット酸の飼料添加(0.7%)がニワトリ(肉用鶏)の血漿および骨格筋の脂質過酸化度ならび代謝産物に及ぼす影響を調べました。その結果、オロット酸の飼料添加は、生体内のピリミジン代謝、βアラニン代謝、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル、アスパラギン酸代謝などの代謝経路に影響を及ぼし、熱ストレス環境下における脂質過酸化度の上昇を改善させることが明らかとなりました(Metabolites 2020, 10(5), 189)。

ピリミジン生合成経路の重要な中間体(オロット酸)の飼料給与と畜産物の品質に及ぼす影響の研究

Figure 2. Integrated overview of the metabolic changes induced by either a cyclic high ambient temperature or by feeding orotic acid. Red arrows indicate high ambient temperature-induced changes in the metabolites, and blue arrows indicate orotic acid-induced changes. The metabolic scheme was based on information gathered from the KEGG PATHWAY Database (http://www.genome.jp/kegg/pathway.html).

https://doi.org/10.3390/metabo10050189